2017年9月11日月曜日

2017 劇団通信8月号

劇団四季の「キャッツ」の会場に入ると猫目線で作られた大きなゴミ捨て場に驚きます。その舞台セットを作ったのが土屋茂昭さんです。各地で上演されるたびに約4千点のゴミが蓄積されたそうで、現在ではアートと言える程のリアルな造形、質感を持った一点ものに変わっているということです。

土屋茂昭さんは劇団四季だけでなく日本の舞台美術の第1人者として活躍なさっていますが、BDPでも「ピエロ人形の詩」「魔女バンバ」「姫神楽」「緑の村の物語」「森のプリンス」の舞台セットでもお世話になっています。先日俳優座で上演した「Grow me up」も土屋さんのデザインです。その仕込みの時の空き時間の雑談で土屋さんが舞台美術家になった経緯を聞くことができました。何と運のいい人だと感心してしまいました。

20代のフリーターだった頃、新宿のアートシアータに見学に行ったらたまたま舞台稽古中の舞台美術家の金森馨氏と出会い、それがきっかけで劇団四季に入ることになり、金森氏のアシスタントを8年間務めていたが、その師匠が急逝してしまい、劇団四季の舞台美術に大きな穴が開いてしまった。2人いた先輩も何本かの作品を手がけては去っていき、結局土屋さんだけが残って急遽ピンチヒッターとしてキャッツの日本版の装置デザインを任されることになったというのです。運命の不思議さを感じずにはいられません。

師匠の金森氏に偶然出会ったこと、そしてその師匠が亡くなり先輩もいなくなったということ。自分の意思ではない不思議な力によって運命を引き寄せているのです。勿論それに伴う人並みはずれた実力があるからこそ現在に繋がっていますが、土屋さんは言っています「理想がないから挫折もなかった」と。