今年の3月は例年より開花が遅かった桜前線を尻目に子どもミュージカルの春公演が一足早く満開の花を咲かせ、各地とも例年を上回る多数の出演者によって嘗てない圧巻の舞台を見せてくれました。特に首都圏では劇団員同士の交流が盛んになってきたこともあって相互の賛助出演で協力し合う頼もしい流れも生まれてきました。また劇団員でない一般の子ども達の賛助出演者も多く、いずれ入団に繋がる可能性もあることから3月は春爛漫に相応しい実り多き公演シーズンとなりました。
毎年3月から4月にかけては卒業や入学、進級のシーズンで子ども達にとっては大きな変化に夢が膨らむ季節でもあります。進学を機に勉学に励むため劇団を去っていく者、児童劇団から更に上を目指して大学の演劇科や専門学校、或いは大手の養成所に進む者など「大きな夢」を離れていく理由は各人様々ですが彼らの新しい門出にエールを送らなければと思いながらも中には理解に苦しむような選択をした子もいて頭を抱えることもあります。しかしその子の将来がどのように展開するかは神のみぞ知ることであり、助言はできても本人のやりたい進路を否定するようなことは一切しないように努めています。
時々各地の公演会場などで嘗ての劇団員からその後の様子を聞くこともありますが、在籍当時演技者としての将来性は全くなかったような子が立派な社会人として生きている姿に感動を覚え、努力して成し遂げるという劇団で培ってきた強さが実社会でも生かされていることに喜びを感じずにはいられません。しかし逆に役者の道に進むとなると一般社会人とは正反対の安定など望むべくもない修行の場に身を投じることになります。投じた以上は厳しさの中でひたすら向上心を維持しながら努力を積み重ねていかなければなりません。そして苦労しながらも演ずることが喜びとなり生き甲斐となって奥深い舞台芸術という魅力に取り憑かれてしまいます。多くの役者達をとりこにしている所以でもあります。