2024年7月10日水曜日

令和6年 6月号

私の身近なところに新婚以来まだ一度も夫婦喧嘩をしたことがないという人がいます。もちろんまだ10年は経っていないということですが、それでも私には信じられないことです。

このご夫婦の場合どちらかが寛大で相手の言うことを全て理解してあげるとても良い性格の持ち主であるかもしれないし、あるいは喧嘩になるような意見の対立がないという二人の間柄とも考えることができます。恐らくそんなこと自分達にはあり得ないと声を大にして反論するご夫婦が圧倒的に多いと思いますが、どの程度が喧嘩なのかという内容にもよると思います。

私は58年間夫婦生活を続けていますが、よく言い争いをして私の方が激怒したことが数え切れないほどあります。しかしその都度私は自室にこもって呼吸を整えます。いつまでもカッカとした状態では身体に良くないしやるべき仕事も捗らないので出来るだけ早く気持ちを切り替えて怒ったことは忘れるようにしています。

私の妻は人さまの前では言葉を荒げたりしたことのないとても優しい女性ですが、時として私にだけは激しい言葉を発する時があります。そのギャップに私も負けずとばかり言い返すという口喧嘩のパターンですが、それでも58年間よく続いてきたものだと自分を褒めてやりたい ? いや、そんなことはない、やはり軍配は妻の方に上がるでしょう。

劇団の草創期から彼女の協力なくしては存続できなかった功績を考えると「喧嘩などとんでもない」と平時には感謝の心を忘れないように心がけているつもりですが、感情的になると気持ちをコントロールするのが難しく、幾つになっても人間修行の最も肝心なところから抜け出せないでうろうろしています。

私の場合絶対に暴力に訴えることはありませんが、最近の暗いニュースで多いのは一時的にカッとなって我慢するという辛抱強さが希薄になっているために起きている事件です。もう少し冷静になれば防げたかもしれないのにと自らの未熟さを棚に上げて呟いています。