2020年3月12日木曜日

令和2年 1、2月合併号

イギリスの作家ロアルド・ダールの小説に出てくる天才少女マチルダは3歳になる前に字が読めるようになり4歳でディケンズやヘミングウエイといった英米文学の巨匠たちの作品を読みこなすまでになります。

ところがこの少女の両親ときたら娘の教育に全く関心がなく、本なんか読んでなんになるんだ、このバカ ! と何かにつけてどなり散らしているダメな両親で、夕食は必ずテレビの前にあるソファーに座ってテレビを見ながら食べるという、それが家族団欒だとうそぶいているような家庭でした。

家の中では読書ができるような環境ではなかったのでマチルダは図書館に通うことを覚え片っ端から貪るように読んでいきます。しかし客を騙しながら商売をしている父親と毎日昼間からビンゴをしに出かける母親という最悪の両親のもとで育ったマチルダ、そして彼女が小学校に上がると、そこの女校長は生徒たちに憎しみをたぎらせている手のつけようもない圧政者であったことなど、このダールの小説は抑圧者である大人・対・被抑圧者である子どもとの戦いの物語だと訳者は解説しています。

果たして子どもの教育やしつけというのは一体なんだろうと考えさせられてしまいます。素晴らしい教育者のもとで育った子どもが必ずしも立派な人格者になる訳でもなく、この物語のように子どもを全く無視し、放任状態に置いた子が読書によって磨かれ立派に成長するという皮肉な現象は、私たちの周りを見回しても納得できる例に事欠きません。

一概に方程式のように結果を求められるものでもありませんが、このマチルダに限らず子どもの頃から読書に親しむということは人間形成に必須の栄養素になり得るものなのです。