2023年5月30日火曜日

令和5年 4月号

コロナの後遺症で咳が未だに完治しないまま、秋の記念公演「緑の村の物語」に出演することを決めました。本番中に咳き込んだらどうしようなどと取り越し苦労的なプレッシャーもあって嘗て味わったことのない心許ない心境になっています。

ところがその心配に輪をかけたように9月に上演するアカデミーの公演「ハムレットレポート」に出演することにしたのです。しかもセリフの多さときたら「緑の村」の比ではなくコロナ以降の私の体調から考えると無謀そのもの、セリフを覚えるだけでも若者の何倍も時間をかけなければなりません。「どうする家康」ではないが「どうする青砥 」! ! その 1ヶ月後には「緑の村」の本番も控えており二つの稽古が同時進行するという役者冥利に尽きる絶好のチャンスと若い時なら捉えたでしょう。

しかしもう若くない、本当にやれるのか ? 自分を極限にまで追い込んで覚悟を決めてしまったのです。というのも80歳という年齢がともすると万事消極的になり、新聞の死亡記事を見るたびに気持ちが沈み、後期高齢者というレッテルを貼られてもう先は短いですよと警告されているような暗い気分にもなりがち、これではいかんぞ 、前向きな生き方をしろ !! と敢えて大量のセリフが待ち受けている難関の道に挑むことにしたのです。アカデミーの劇団員は大学生や高校生、正に旬の若者達、そのエキスをもらいながら共に汗を流せる最高の環境、その利用価値に目覚めたのです。

 「ハムレットレポート」は大学の演劇科を中心に劇中劇「ハムレット」を挟んで進行していきます。私はハムレットの父親を殺害したクローディアスという叔父の役で、ハムレットと対立します。主演のハムレットを演じるのは高校生3年生の伊藤圭伸、暇を見つけては彼とマンツーマンの稽古をしていますが、回を追うごとにみるみる成長していく若者の姿は実に刺激的で羨ましい限りです。