2023年9月4日月曜日

令和5年 7月号

 若者には限りない未来があり大きな夢を描くことができる。夢を描くことは、将来に対しての設計図を作り、自らが設定した具体的な進路に向かって、果敢に挑んでいくパワーを与えてくれる。芸術やスポーツにおいては、努力目標も明確に示されていて、そのラインに沿っていけばある程度は描いていた夢に近づくこともできるが、次第に到達点はどこにあるのか定まらなくなり、設計図を修正しなければならない時がやってくる。

例えばスポーツは現役選手の寿命というものがあり、引退してからの人生をどう生きるのか、俳優にしてもスター的存在になった後の人生がどうなるのか、アイドル的女優などもある年齢に達した時のギャップに遭遇して、以後の生き方を考え直さなければならない時が来る。幼い頃から描いてきた夢の修正、設計図を書き直す楽しみな時期が必ずやってくるのだ。

しかしそのようなことを見越して、現実的な夢を描けということでは決してない。若い時にしか出来ない何にでも挑戦し可能にしてやるぞという大胆な勢い、いわば無謀とも言えるだけの大きな塊が若者によって弾ける勢い、それが新しい世界を作り上げる。

だからできるだけ大きな夢を描いてほしい。たとえ夢が破れてもまた、新たに夢を描けばいい。恐れることはない、躊躇するな、何度も修正していけるのが若者の特権だ。私にも若い時があった。これまで何度も修正を迫られてきた。だからこそもっと大きな夢を描けた筈だと振り返っても見るが、反省だらけの半生を今更どうすることもできない。

最大の修正は劇団四季を辞めた時、さて明日からどうして生きていこうかと考えていた矢先ふと児童劇団をやってみようと思いついた。収入のアテもない無謀な決断だったが、今大勢の子ども達や若者に囲まれた境遇を考えると、不思議な気がしてならない。どんな夢にも勝る至福の場所が劇団であり、そのような素晴らしい場所を与えてくれた神に限りなく感謝している。我が夢を修正したおかげである。