2025年2月14日金曜日

令和6年 12月号

 歳を重ねると月日の過ぎるのが超特急のように短く感じられ、あっという間に年末の夢コンがきてそしてすぐに新年を迎えるという目まぐるしいサイクルの中で生きているような気がしています。

子どもの頃は長く感じられた一年は10歳の子であれば10分の1の一年であり、私のように82歳になると82分の1年という短さになってしまいます。時間の長さは一定であっても状況によって感じ方が違うことを考えれば時間はあってもないくらい不思議な気持ちになる時があります。何かに夢中になっている時はあっという間に過ぎてしまいますが、行列で何かを待っている時などなかなか時間が経ちません。こんなことが気になるのはやはり歳のせいなのでしょうか。

さて歳のせいとは言いたくありませんが先日ある劇場で大したことでもないのに酷く腹立たしいことがありました。他人の行為に腹を立てて不愉快になることほど馬鹿らしいことはありませんが性格は幾つになっても変わらない自分が情けなくなります。

この時は私の席の隣にいた30代の女性の二人ですが、通路から私の席の前を通って座る時に狭くて通れないので私は素早く立ち上がってレディーファースト気取りで通してやりました。とろが大きなお尻が通過した後「すみません」も「ありがとうございます」の一言もなく二人の女性はおしゃべりに夢中、それが隣に座ったので居心地の悪さといったらありません。

NYのブロードウエイやロンドンのウエストエンドなどの劇場では必ず「ソーリー」と言って席に着くのが習慣のようでその一言があればお互いに気持ちよく観劇できるのです。ところが日本ではどうでしょう。周りを見ても徹底していないもどかしさを感じてしまいます。

礼儀を重んじると言われている日本人がこれでは恥ずかしい限りです。自分さえ良ければという他人を思いやる気持ちが希薄になってきているのか、私一人が意気がってみたところで所詮年寄りの戯言で済まされてしまいそうです。





令和6年 11月号

 Bプロの演技レッスンを狭い事務所で不定期ではあるが私のスケジュールの空きがある時にやっている。

大体4、5人のグループで2時間バッチリ、午前と午後、あるいは夜間と続けてやる時もあるが不思議と疲れない。それは可愛い子ども達がおじいちゃんを囲んで孫やひ孫と団欒しているような雰囲気でのレッスンであるから、私にとっては若返りのひと時と位置付けている。

何よりも談笑の中で一人一人の性格や向き不向きがよく分かり堅苦しい面接などでは得られない貴重な発見の場にもなっていて、外部のオーディションなどに行かせる時の人選にも役に立っている。

小学生はとにかく可愛い、中学生は大人の雰囲気で輝き始めている子もいて高校生と一緒にレッスンするような時もある。先日滑舌の基本的な話の中で、しゃべりにもいろんな言い方があって例えば寅さんの口上ように、と言ったところで、そうか「寅さん」って知ってるか ?と念を押したところ全くの無反応、それじゃ「男はつらいよ」という映画は ? 知りません。ちょっと待てよ、そんなことも知らないのか、山田洋次監督は? 尚更わからないと首を傾げる。えっ? 君たちは映画観ないのか ? 無反応、黒澤明監督は ? そうか、知らないのか、では清純派の女優としてデビュー以来日本の映画界のトップ女優として今なお第一線で活躍している吉永小百合は ? 知らない---残念 ! 

この時集まっていた中学と高校生は映画もテレビも見ないという。ほとんどスマホで事足りているようだ。そんな勿体無い、素晴らしい映画を観て感動し、感性が磨かれるようなことはないのか、果たして年齢の差によるものなのか、家族も含めて環境がそうなのかは分からないが兎に角一番吸収できる時期に、しかも現に劇団にいて舞台に立って演じている若者がそれでは困る。

あゝ目の前にいる中高生と私は70年近い開きがあり自分が宇宙人のような存在に思えてしまう。いやいやそれでも先輩として凛とした姿を見せなきゃ




令和6年 10月号

 私の代名詞であるフランスの世界的に有名な2枚目俳優アランドロンさんが亡くなった。ずば抜けたいい男、特に地元フランスでよりも日本の女性にモテた色男。その代名詞 ? 私が ? 自分の顔をよく見てみろよ ! と誰しも思うのは当たり前、それでも結構若い時から使い続けていた癖が今でも抜けていないから困ったものだ。誰かと話している時ふと口を滑らすと座が和み会話が楽しく進んでいく心地よい体験が忘れられないからだ。

あまりにも私と似ていないから言えることであって要はイケメン「水も滴るいい男」の代名詞、ところが最近若い劇団員の前でアランドロンのことを言っても全く反応がない。寂しい。

彼らは早速スマホを取り出して検索し、私の顔と比較しながら不審な目で見られてしまう。ジョークで楽しい雰囲気を作ろうとしたことが「変なおじさん」に急降下 !! さもあらん。アランドロンが活躍した時代を懐かしむ世代は年々減少していく。

ところが同じ時代に活躍していたオードリーヘップバーンになると現代の若者の間でも認知度が高く巷の広告宣伝にもよく登場している。「ローマの休日」は何度見ても心を揺さぶられるし、かつての名作と言われている映画は時代を超えて私たちの人生観まで変えてしまうほどの影響力がある。もちろん文学に関しても、芝居に関しても言えることだが、映画人口の方が圧倒的に多いからその恩恵に授かっている人の数も計り知れない。

最近は映画だけでなく若者が興味を持つあらゆるジャンルのものが横行し影響されるエンタメなども多岐にわたっているため簡単に論ずることもできないが、一律でない一人一人の個性の輝きを見失うことなく自分にしかできない能力を磨きながらしっかり将来を見つめて進んで欲しいと思う。

劇団BDP、児童劇団「大きな夢」でやっているミュージカル活動も所属している劇団員にとっては将来を左右する大きな分岐点になることもあり、劇団で学び培ったことが栄養価の高い成長促進剤になれば幸いである。



令和6年 9月号

 最近子どもミュージカルの公演会場でフォトスポットのパネルから顔を出して写真を撮る光景が多く見られるようになってきました。

あれッ? 同じパネルが他のKMの会場にもあったぞ ? と調べてみると父母会間で使いまわしていることが分りました。例えば「桃太郎!」や「ピエロ人形の詩」は加賀KMで制作したものを貸し出しているということです。加賀父母会の高野都さん(デザイナー・工芸作家)が製作なさったそうで、折角作ったものをそのままにしておくのは勿体無いということで高野さん自ら他のKMに呼びかけて有効利用してもらっているということです。

このような形での父母会同士の交流があり、昨年の父母会役員総会では遠隔地の札幌、福岡、熊本、広島、加賀、長野の役員の方々が交流を深めあったというお話も聞きました。それぞれ皆さんが郷土愛を持って結束し劇団活動を推進してくださっていることの有り難さ、遠隔地だけでなく関東首都圏の各KMの父母会の方々の交流も盛んに行われている現状に30周年を経た劇団は父母会という盤石の組織に守られての公演活動であることを忘れてはなりません。

元々父母会ができたのは、劇団が営利を目的とした商業主義的な活動と見られがちなこともあり、あくまでも地域に根差したミュージカル活動を推進する団体であり、教育的要素も含めての活動であることから各地域の保護者に運営してもらう組織として存在することになりました。

従って劇団は父母会からの依頼で現地に赴いて劇団員の指導に当たり、毎年の上演演目の舞台を仕上げるという独自の形として定着しています。子どもミュージカルの場合チケットを頒布するのはほとんどが父母会、つまり出演者の親御さんの手によってなされていますが、子どもが成長して高校生や大学生になっても自分では売り捌けない話もよく耳にします。出演者がチケットを捌かなければ成り立たない演劇の世界、この道で身を立てようとする者はしっかり心に刻んで欲しいと思います。




令和6年 8月号

児童劇団員のキャスティングについて書いてみたいと思います。

各地の子どもミュージカルは毎年上演作品が決まってから配役を決めるためのオーディションを行います。年一度のキャストオーディションは劇団員の実力と努力の成果が問われる最も重要な位置付けとなっています。

オーディションの結果を審議するキャスティング会議ではそれぞれ担当の講師が一つ一つの役について討議しながら配役にふさわしい子をピックアップしていきます。世間一般のオーディションではキャラクター的素材とそれに伴う実力が最優先されますが、「大きな夢」ではそれとは異なった独自の審査方法でやってきました。

日頃のレッスン態度や在籍年数、努力の成果が見られるかなども重要なポイントです。しかし主役となるとそればかりではありません。実力はもとより華のある存在感や責任感などの人間性、劇団活動に協力的かどうかなども判断材料になります。だからと言って毎年同じようにメインにすることは極力避けて他の子にもチャンスを与え成長を促していくことも忘れてはいません。期待していなかったような子が飛躍的に成長していった姿もたくさんみてきましたが、いずれにしても講師の先生達は苦渋の決断を迫られる時でもあります。発表したキャストで果たしてどの程度の完成度になるか、やってみなければわからない面も多く、キャスティングで成功した例もある一方逆に反省材料が多く残ってしまった例も少なくありません。

子ども達の将来にどのような影響を与えるのか一人一人の可能性を考えながら、尚且つ発表した後のフォローを講師の先生達はしっかりやっていかなければなりません。児童劇団「大きな夢」は「子どもの教育」ということを掲げて活動していますが、オーディションの結果だけでなく子ども達が今後も前向きに張り切って創作活動ができるよう具体的な心のこもったアドバイスや明るい励ましの言葉をかけてやってほしいと願わずにはいられません。 




2024年7月10日水曜日

令和6年 7月号

 坪田一男先生のことを紹介したいと思います。

坪田一男先生は現在 (株)坪田ラボの代表取締役社長であり、慶応義塾大学名誉教授/慶応義塾大学医学部発ベンチャー協議会代表/医学博士/経営学修士(MBA)などの幾つもの肩書きをお持ちで正に八面六臂のご活躍をなさっている私が最も尊敬している方のお一人です。

先生には5人のお子さんがあり長男、次男の2人を除いて後の3人が25年前小学生の時に西船橋KMに入団してきました。そして彼らは大人になった現在に至るまで劇団BDPの活動を支え続けてくれています。お父様である坪田一男先生とはその25年前からのお付き合いで、いろいろ相談に乗っていただいたり、折に触れてご援助いただいたり、現在劇団の株主にもなっていただいております。

先生にお会いした当初は眼科医としてのご活躍という程度の認識しかありませんでしたが、この度出版された「新しい医師の役割」という先生のご著書に触れてこれまで存じ上げなかった奥深さに圧倒され、改めて先生の偉業にひれ伏してしまうほどの感動と勇気を与えていただきました。と同時に私の甘っちょろい劇団運営によって妻や周りのスタッフには迷惑のかけ通しであったことを深く反省することにもなりました。

劇団を立ち上げて何とかやってきた30年の間に坪田先生は独特の「ごきげん」主義で何百億という数字を動かす株式上場会社をお作りになりました。そして日本の医療界にメスを入れるイノベーションを提唱し研究を重ね、世界市場に向けて活発なビジネス展開をなさっています。

そのような先生ですが良き家庭のパパとして公演やイベントにも足を運んでくださり、時々奥様のことをみんなの前で「カズコ愛しているよ !」と明るく愛深い表現をなさったりする楽しいお人柄でもあり、私など恥ずかしくて到底真似できることではありませんが、やはり常識では計れない頭脳と行動力をお持ちの先生だけにこの先更にとてつもない大きなことが起こりそうな予感がしないでもありません。




令和6年 6月号

私の身近なところに新婚以来まだ一度も夫婦喧嘩をしたことがないという人がいます。もちろんまだ10年は経っていないということですが、それでも私には信じられないことです。

このご夫婦の場合どちらかが寛大で相手の言うことを全て理解してあげるとても良い性格の持ち主であるかもしれないし、あるいは喧嘩になるような意見の対立がないという二人の間柄とも考えることができます。恐らくそんなこと自分達にはあり得ないと声を大にして反論するご夫婦が圧倒的に多いと思いますが、どの程度が喧嘩なのかという内容にもよると思います。

私は58年間夫婦生活を続けていますが、よく言い争いをして私の方が激怒したことが数え切れないほどあります。しかしその都度私は自室にこもって呼吸を整えます。いつまでもカッカとした状態では身体に良くないしやるべき仕事も捗らないので出来るだけ早く気持ちを切り替えて怒ったことは忘れるようにしています。

私の妻は人さまの前では言葉を荒げたりしたことのないとても優しい女性ですが、時として私にだけは激しい言葉を発する時があります。そのギャップに私も負けずとばかり言い返すという口喧嘩のパターンですが、それでも58年間よく続いてきたものだと自分を褒めてやりたい ? いや、そんなことはない、やはり軍配は妻の方に上がるでしょう。

劇団の草創期から彼女の協力なくしては存続できなかった功績を考えると「喧嘩などとんでもない」と平時には感謝の心を忘れないように心がけているつもりですが、感情的になると気持ちをコントロールするのが難しく、幾つになっても人間修行の最も肝心なところから抜け出せないでうろうろしています。

私の場合絶対に暴力に訴えることはありませんが、最近の暗いニュースで多いのは一時的にカッとなって我慢するという辛抱強さが希薄になっているために起きている事件です。もう少し冷静になれば防げたかもしれないのにと自らの未熟さを棚に上げて呟いています。